離婚や面会交流に関する文献情報(その1)
「親が離婚した子どもの権利章典」
日本と米国の家庭裁判所は、一般国民に対する情報提供に大きな違いがある。
米国で離婚するためには、何らかの形で裁判所を利用しないといけないこともあってか、米国の家庭裁判所は情報提供に熱心で、法的課題だけでなく離婚が子どもに及ぼす影響などに関しても情報提供している。
離婚に関連する教育的プログラムも活発である。教育プログラムは各州ごとに工夫が見られるが、一つの例として、ニューヨーク州を取り上げてみよう。
ニューヨーク州でも離婚するためには、裁判所が認定した教育プログラムに参加することが求められている。ニューヨーク州裁判所事務総局では、離婚を考えている親用のハンドブックを刊行しており、ハンドブックは80頁ほどのもので、インターネットでも取得可能である。この中には、親が離婚した子どもの権利章典(Bill of Rights for Children Whose Parents Are Separated or Divorced)が取り上げられている。
子どもが親の離婚の影響を受ける客体としてだけでなく、権利の主体として取り上げられている点が興味深い。この権利章典では、12項目の子どもの権利が取り上げられている。いずれ日本でもこれらに関する議論が起こることを期待しながら、拙い訳文を掲げてみよう。
①両親の「どちらを選ぶか」を問われない権利。
②両親間で展開されている法的紛争の詳細を知らされない権利。
③一方の親から、他方の親のパーソナリティや人格上の「欠点」について、
説明されない権利。
④一方の親と電話で話すときに、他方の親に聞かれないプライバシーの権利。
⑤面会交流で他方の親と過ごした内容を、もう一人の親から「詳しく尋ねられない」権利。
⑥一人の親から他方の親への、伝言者となることを頼まれない権利。
⑦一人の親から他方の親へ、嘘を伝えることを頼まれない権利。
⑧元夫婦間のことに関して、相談相手を頼まれない権利。
⑨親の離婚にともなう感情を、表現する権利。
⑩親の離婚にともなう感情を、表明しないことを選ぶ権利。
⑪両親間の紛争に巻き込まれない権利。
⑫両親のどちらをも愛することに、罪悪感を感じないでおられる権利。
なお、米国では各種サービスや施設の利用者の権利を擁護するために、権利章典が老人ホームや障がい者の施設、学校などにも、掲示されていることはよくある。
(宮﨑昭夫)