離婚や面会交流に関する文献情報(その3) - NPO法人北九州おやこふれあい支援センター
NPO法人親子ふれあい支援センター(通称:こふれ)

NPO法人北九州おやこふれあい支援センター「こふれ」は、面会交流支援を通じて子どもが健やかに成長・発達できる社会をめざしています。

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参考文献

離婚や面会交流に関する文献情報(その3)

ジョアン・ペドロ-キャロル著、丸井妙子訳『別れてもふたりで育てる』
明石書店、2015年、四六判、381頁、2,500円。

「こふれ」では従来、面会交流の援助を行ってきた子どもの年齢が幼いこともあって、スキンシップを大切にし、 穏やかで、安全で、愛情に満ちた面会交流を目指してきた。しかし、「こふれ」の活動期間が伸びるに伴い、面会する子どもの平均年齢が少しずつ上昇してきている。 2~3歳であれば、言語的表現にはかなりの限界があるが、3~4歳となり、4~5歳と成長するにつれて、子どもと的確な言語で関わり合うことの重要性が増している。さらに、スタッフが監護親や面会親へどのような言語的な働きかけを行うかも、今まで以上に課題となってきている。
 離婚を子どもにどう説明したらよいかに関しては、取扱った文献も増えてきているが、面会交流時の子どもへの言語的関わり方に関しては、わが国では文献が少ない。 ペドロ-キャロルの『別れてもふたりで育てる』は、発達心理学の知見をおさえ、親が離婚した子どもの心の動きを的確に描いている。このため、離婚を子どもにどう説明するかの情報とともに、 面会交流時等の言葉かけのヒントになる情報が多いように思われる。もちろん、日本と米国では社会や文化が異なり、面会交流の態様や子どもと過ごす時間も大きく異なっており、 本書のコピーのような働きかけでは成功は難しい。本書を手がかりに、日本での工夫を重ねていくことが求められているように思われる。
 本書のテーマである、米国等で行われている離婚後父母の双方が子どもの養育に関わることに関して、多くの日本人の読者にはイメージがわきにくいと思われる。 本書には、離婚後の父母が別々に養育にあたる「並行的養育」と、父母間で養育に関して協同が行われる「協調的養育」が紹介されており、参考になる点が多い。
なお、本書の訳文は全般的に読みやすいが、一部にわが国での定訳を無視した表現がある。sole legal custodyを「法的単独親権」と訳すのは許容範囲かもしれないが、joint physical custodyは「身体的共同親権」ではなく、家族法学者の棚村政行などの先行業績に従い、「共同身上監護」と訳す必要があろう(180頁~)。
(宮﨑昭夫)