離婚や面会交流に関する文献情報(その4) - NPO法人北九州おやこふれあい支援センター
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参考文献

離婚や面会交流に関する文献情報(その4)

紫原明子著『りこんのこども』
マガジンハウス、四六判、165頁、1,300円+税、2016年。

面会交流に携わる私たちは、保育所や幼稚園就園前後の親が離婚した子どもと出会う機会が多い。私たちが出会っている子ども達が思春期を迎える頃に、親の離婚とどう向き合うだろうかということは、大変知りたい情報である。本書は、面会交流を直接取り扱っているわけではないが、私たちにとって参考になる情報が多く含まれていると思われるので、文献紹介として取り上げた。
 本書の著者は離婚経験を持ち、二人の子どもを育てているシングルマザーである。「実際、子どもたちは、親の離婚をどう受け止めているのでしょうか。また、その後に続く毎日を、どんな風に過ごしているのでしょうか」(5頁)という問題意識から、離婚した家庭で育っている6世帯の子どもへのインタビューによって得た情報を再構成して、一冊の本にしたものである。
 6世帯の子どもの内訳は、小学5年生女子、中学生男子(学年不明)、中1男子、高3中3の姉妹、中3女子、17歳高校男子、である。学年が高いので、自らの言葉によって表現できる年齢の子ども達の意見や態度が、本書には示されている。紙幅の都合上、個別の子どもの意見を取り上げることは出来ないが、「離婚ってさ、相手のことが嫌いになったからするんでしょ。嫌いな人の子どもの私、ママは嫌いじゃないの?」(9頁)という発言には注目したい。
 「離婚の数だけ家族のドラマがある」(159頁)ので画一化できないが、「私たちはただでさえ飽きっぽく、折に触れて新しい刺激を求めずにはいられない」(160頁)存在であることを前提に論を進めている。離婚に関する大人の事情は、「ある面で離婚とは、夫と妻が健全な生活を再び取り戻すための、極めてポジティブな施策とも言えるのだ」(161頁)ととらえることが出来るとしている。しかし子どもには、子どもの事情、立場があるが、「人間の思考や感情、社会や人生といったものは、どちらかが善ならばどちらかが悪、どちらかが白ならばどちらかが黒と、決してそんな風に簡単に割り切れるものではなく、本当はもっと立体的で、多面的だということなのだ」(163~164頁)と指摘している。
 「両親の不和や、別離。子どもたちが自らの抗えない境遇を通して経験したことを、その後の人生の糧に変えられる後押しをすること。きっとそれが“りこんのおとな”である私たちが“りこんのこども”である彼らに対して果たすべき大切な務めなのだろうと思うのだ」(164~165頁)と指摘している。
 本書はブログやツイッターを活用する、ネットで育った世代独特の軽い文体であり、離婚を取扱った類書とはトーンを異にしているが、内容的には考えさせられるものを多く含んでいる。なお、同一著者による『家族無計画』朝日出版社、2016年、は現代家族論として秀逸。
宮﨑昭夫(NPO法人北九州おやこふれあい支援センター理事長)

[参考…………本書で取り上げられているケースの要約]
●小学5年生、女の子、実父母離婚後は母親に引き取られる。その後母親再婚。離婚後も実父との関係は、おじさん的な存在としてあったようだ。「離婚ってさ、相手が嫌いになったからするんでしょ。嫌いな人の子どもの私、ママは嫌いじゃないの?」
●中学生の男の子。2歳の時に父母離婚、母親宅で育つ。実父との交流はなく育つ。養育費は支払われておらず、母親が複数の仕事をかけもちして家計を支えた。子どもの頃には「うちにパパがきますように」と七夕の短冊に願いを書いていた。母親が再婚し、パパ(?継父)との家庭生活へ。
●中1、男の子。5歳の時に父母離婚。それ以来、父親とは会っていない。
●高3、中3の姉妹。6年前に父母離婚。離婚後も父親と子どもとの関係は続く。母親が離婚後は生活に追われ、疲れているように見えるので、「子どもとして、パパとママには離婚しないでほしかった」(103頁)との想いを持って生きている。
●中3女子。3歳の時に父母離婚し、父親出ていく。子どもは月に1~2度はパパの家に遊びに行っていた。パパに彼女が出来、再婚、子どもが出来ることになって「私がいるのに、なんでパパは別の子のパパになっちゃうんだろう」(108頁)との想いをいだく。
●17歳、高校生の男の子。2歳の時に父母離婚、父親に育てられる。母親は再婚しているが、子どもと間はLINEでのつながりはある。