離婚や面会交流に関する文献情報(その9) - NPO法人北九州おやこふれあい支援センター
NPO法人親子ふれあい支援センター(通称:こふれ)

NPO法人北九州おやこふれあい支援センター「こふれ」は、面会交流支援を通じて子どもが健やかに成長・発達できる社会をめざしています。

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参考文献

離婚や面会交流に関する文献情報(その9)

二宮周平編『面会交流支援の方法と課題-別居・離婚後の親子へのサポートを目指して-』
法律文化社、A5版、230頁、2017年、3,200円+税

本書は、立命館大学の二宮教授が科研費を活用して行った「家事事件当事者の合意による解決と家事調停・メディエーション機能の検証」と題する研究の一部として刊行されたものである。中心は2015年11月29日に京都で開催された、全国の主だった面会交流支援団体が参加して行われた、「面会交流支援団体フォーラム2015」での報告である。なお、このフォーラムには「こふれ」からも参加している。
 フォーラムで示された、各団体の面会交流支援上の工夫には目をみはるものがあり、「こふれ」にとっても参考になる点が多い。活動の幅としても、単なる面会交流支援にとどまらず、子ども達への学習支援活動、遠足、離婚家庭の子どもたちを集めたキャンプや合宿、利用者を対象にした「母親達の集い」「父親たちの集い」のような利用者の父母に対するセミナーなどもある。面会交流支援活動のプロセスとしては、事前相談の工夫や面会終了後の当事者やスタッフ間での振り返りの方法などにも参考になる点が多い。さらに、スタッフの増員養成のための支援者養成講座などからも学べる点が多い。
本書にはフォーラムで報告しなかった団体を含めて、編者が選択した団体が、編者の指定した面会交流に関するテーマで論稿を提出しており、これらも参考になる。面会交流を行っている団体は、元家裁調査官、家事調停委員などの司法関係者、臨床心理士関係者、保育関係者、宗教関係者など多様である。その中にあってピアサポート(同様な境遇にある仲間からの支援、この場合は親の離婚を経験した子どもとしての経験を有する人)を中心とする団体である、ウイーズの活動も紹介されており、示唆に富む提言が含まれている(171~188頁)。ウイーズは静岡市・浜松市より委託を受けて、面会交流仲介支援も行っている。
本領域の先進自治体である、明石市の幅広い活動も紹介されている(189~201頁)。末尾の資料欄には、Vi-Projectによる「離れて暮らす親子のためのハンドブック」、養育支援制度研究会による「子どものためのハンドブック」なども収載されている。
本書には幅広い主張と内容が含まれており、面会交流での立ち位置によって、多様な読み方が可能だと思われる。評者としては、本書を読むことによって、初心に帰ることの大切さを教えてもらった思いである。本書を手がかりに、「こふれ」の実務をていねいに見直していきたいと切望している。
(宮﨑昭夫)