離婚や面会交流に関する文献情報(その7) - NPO法人北九州おやこふれあい支援センター
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参考文献

離婚や面会交流に関する文献情報(その7)

有地亨著『離婚!?』
有斐閣、1987年、四六判、265頁

著者の有地先生は、家族法担当の九大教授として、また福岡家裁の家事調停委員として長年働かれ、2006年に亡くなられている。本書には判例も取り上げられてはいるが、主要な材料は、新聞の人生相談などへの一般市民からの投稿記事と、有地先生が代表として行った文部省科研費による現代家族の機能障害に関する調査研究からの情報によっている。このため主な素材は、30年前から50年前のものである。時間の経過の中で、離婚に関連する課題にはどのような変化があったのかをみるため、本書を取り上げてみよう。
 この50年ほどの間の離婚に関連する主な法改正としては、①人事訴訟法の改正により、離婚訴訟が2004年より地方裁判所から家庭裁判所へ移管された、②民法第766条が改正され、養育費及び面会交流が法律の本文に登場し、2012年より実施された。③家事審判法が家事事件手続法に改正され、2013年より裁判所の手続に変更がみられた。しかし諸外国のように、ドラステッィクな家族法の改正は行われず、限られた部分的な改正が行われた。  わが国の離婚率は、本書が出版された1987年は1.30であり、その後徐々に増加したが2002年の2.30をピークに減少し、2015年には1.81となって、本書が出版された時期よりも、離婚率はやや高止まりしている。離婚の種別では、協議離婚が約9割、調停離婚が約1割で、裁判離婚は少数という傾向は、最近でも大きくは変わっていない。「これまで長い間、離婚には悲劇的なイメージがつきまとい、離婚は人生における失敗・挫折というマイナスのイメージで受け取られてきた。(中略)このような考え方に多少の変化が現れ、離婚は人生の転機または一つのステップとプラスのイメージでとらえるようになった人びとも出てきた」(149頁)、との見方は現代でも通用するであろう。
 本書で取り上げられている、離婚に関連する「夫の暴力」などの課題は、現代でも通用する。本書で取り上げられている、財産分与や慰謝料などの金額は、伸びが低迷しているように思われる。養育費に関しては、厚生省の1968年調査によると「夫のほうで養育費を負担しているのは僅か10%」(179頁)と記している。2011年の国の調査によると養育費を受け取っている人は約2割であり、受給者率は伸びてはいるが低迷しており、養育費をめぐる課題に関しては、大きな変化はない。
面会交流(本書では時代を反映して「面接交渉」と表現してある)を支援する「こふれ」のような第三者機関が存在しない時代に本書は出版されているが、面会交流を積極的に位置付けている。著者の、「面接交渉の成功の秘訣は、子どもは両方の親の家を往き来しても、親は相手の家に行かないし、親はお互いに相手の悪口を絶対に言わないこと、(中略)そしてなによりも子どもを引き取った母親は、子どもに対してつらいけれども、どうしても離婚しなければならなかった事情について、事実を正確に伝えて、時間をかけて話し合うことがまず必要である」(223頁)、との指摘は現代でも生きているように思われる。
 本書には、調停委員の基本的姿勢や態度に関する厳しい指摘も含まれており(208頁など)、裁判所関係者などに今日でも参考になる点が含まれている。ともあれ温故知新として、時間のある時に手に取って読んでみてほしい書籍である。本書はかなり古い本のため、書店での購入は無理であり、公共の図書館等での閲覧をお勧めしたい。
(宮﨑昭夫)