離婚や面会交流に関する文献情報(その12) - NPO法人北九州おやこふれあい支援センター
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参考文献

離婚や面会交流に関する文献情報(その12)

西牟田靖著『わが子に会えない-離婚後に漂流する父親たち-』
PHP、四六判、318頁、2017年、1650円+税。

著者はノンフィクション作家である。著者自身の離婚後子どもに会えない経験が出発点となって、離婚後にわが子に会えない父親の生活を取材して、18組のケースをノンフィクション的に取り上げた本である。「子どもに会えなくなった男たちとはいったいどのような人なのか。別れに至るまでにどのように出会い、子どもをつくり、そして別れたのか。そして別れた後、どんなことを思い、どのような人生を歩んでいるのか。善悪では計りきれない多くの人生、つまりはより多くの視座伝えることで“会えない”という現象に可能な限り接近したいと思っている」(6頁 )とプロローグでは語っている。
 本書は父親側の言い分だけを取り上げており、離婚になった理由なり離婚の経緯に関して、母親側の言い分を取り入れると見えてくる図もかなり異なったものとなる可能性はある。父親側の言い分だけを聞いているせいか、別れた(元)妻の言動に関して否定的な発言が多い。しかし一部の登場人物は、内罰的に結婚生活に関して父親(夫)としての足りなさや不適切さに焦点をあて、結婚生活を振り返っている点にも着目したい。
 18人のケースはまさに多様であり、浮気相手と登山に行き、山から滑落して浮気がバレ、養育費や面会交流に関して、何も決める余裕もなく離婚したケース。今までに3度の結婚をし、2度離婚しながら、すでに3度目の妻とも別居状態になっており、 それぞれの妻との間に子どもがいるケース。家事をまったくやらず、子育てに興味を持たない女性との結婚生活のケース。外国(中国)人との結婚生活のケース、などが含まれている。
 離婚の手続としては、一般的な協議離婚の他に、公正証書を利用したケース、裁判所の調停を利用したケース、最高裁まで争ったケース等、多様である。本書では、弁護士が妻側に介在してDVとして取り上げられたケースの比率はかなり高い。それに、妻が子どもを実家等に連れ去り、別居を既成事実化しているケースもかなりあった。
「自分の例は特殊だと思っていたのが、皆同じようなパターン(虚偽DV、悪徳弁護士、親が黒幕、等々)で苦労していること」(28頁)という表現にあるように、本書に登場する人物の主張に よれば、弁護士の活動に振り回されているケースの占める割合は高く、「弁護士による離婚ビジネスの存在」(99頁)を問題視している。
「司法の世話になることで、問題の解決を“邪魔”されたり、人によっては“とどめ”を刺されたり。司法によって不幸がもたらされたと言えなくもないケースがまれではなく、裁判所が親子を引き裂いた、と言ってしまっても、言いすぎではなかった」(315頁)と、著者は主張しているが、この主張は一般化できることであろうか。
(宮﨑昭夫)